「CSM」と「CRE」の2職種を新たに設けた背景や舞台裏
こんにちは!カスタマーサクセスエンジニア改め、カスタマーサクセスマネージャーの井上です。Autify には昨年・2021年3月の入社で1年ちょっと在籍しているのですが、こちらのブログでは初めまして!となります。ちなみに前職では、サーバーモニタリングSaaSの「カスタマーリライアビリティエンジニア」としてお仕事をしていました 😃
このたび Autify では、これまでの「カスタマーサクセスエンジニア」職を「カスタマーサクセスマネージャー(CSM)」と「カスタマーリライアビリティエンジニア(CRE)」という2つの職種に生まれ変わらせる、という決定をしました。今日はその背景や舞台裏のようなお話を、こちらでご紹介します。
「カスタマーサクセスエンジニア」とはどのような職種だったのか
「カスタマーサクセスエンジニア」職だった私達は、主に以下のような業務に取り組んでいました。
- カスタマーサクセス業務(ハイタッチな活動も含む)
- オンボーディング支援の提供
- 利用状況に応じてのプロアクティブな各種活動
- テックタッチを実現するための自動化ワークフローの立案、構築
- プロフェッショナルサービス(有償による顧客支援サービス)の提供
- カスタマーサクセスワークフローの構築と実行
- ドキュメントの作成、更新
- セールスチーム、カスタマーサポートチームの支援
- カスタマーサクセスツール(ChurnZero)の運用
- データ基盤とカスタマーサクセスツールとのつなぎ込み部分のエンジニアリング作業
- 各種自動化作業
- などなど
上記のような業務は、最初からカスタマーサクセスエンジニアの職域として決まっていたもの、というわけではなく、数年にわたって業務に取り組むなかで、徐々に獲得、または移譲していった結果によるものです。
「カスタマーサクセスエンジニア」という職種名としたのも、「扱っているプロダクト(Autify)が “ソフトウェアテスト自動化プラットフォーム” という、技術プロダクトであるから」というところに依るものが大きいため、という理由だったと聞いています。
この職種名のもと、「何らかの形で技術に携わり続けたい」「エンジニアリングのバックグラウンドを発揮したい」「カスタマーサクセスとエンジニアリングの掛け合わせに可能性を感じている」…といったメンバーが集い、それぞれの持つ多様性と強みを活かしながら、これまで成果を挙げ続けてきました。
しかし、最近になって少しずつ、以下に挙げるような歪みのようなものがでてきたことも事実でした。
- 得意領域が異なる多様性のあるチームメンバーを、ただひとつの職種でグルーピングし続けることへの違和感。
- 社内の他メンバーから見たときの、現在取り組んでいること、目指している方向などに対するわかりにくさ。
- 上記のように多岐にわたる業務に取り組むことができる職種であるにも関わらず、新たに Autify に興味を持っていただいた方にとって、「エンジニア」と付く職種名が必要以上に心理的なハードルになってしまっていそうな場面があったこと。
これらに加えて、2022年4月(弊社での第2四半期の初月)からチームメンバーの一人がこれまでよりもさらに CS Ops に注力していくことが決まっていました。そういったこともあり、これはとても良い機会だということでそれに合わせて、業務内容の整理と職種名の刷新を提案しました。
そもそも「カスタマーサクセス」とは何か
そもそも「カスタマーサクセス」とは何なのでしょうか。
カスタマーサクセスとは、そのプロダクトを利用することで得られる成功(成果や効果、利益など)を継続的にお客様に収めてもらうための思想やプラクティス、文化のことです。そのため、特定の部門や部署、担当者だけが持っていればよいものというわけではなく、そのプロダクトを提供する側にいる関係者全員が持っているべき考え方とされています。
これは弊社でも実践されていることで、日々の多くの場面で「カスタマーファースト」を実感することができています。カスタマーサクセスが実践されている組織で表出することの多い特徴として以下のようなものがあることは、ご存知の方も多いかもしれません。
- プロアクティブ・予測的(Predictive)・積極的である
- データに基づいて判断し行動している
- 顧客のニーズに基づいたプロダクト・サービスの提供をしている
- 顧客のロイヤルティを創出している
- 狩猟(ハンティング)ではなく、農耕(ファーミング)である
Autify の「カスタマーサクセスマネージャー(CSM)」とは、どんな職種なのか
まず一般論としての「カスタマーサクセスマネージャー(CSM)」とは何か?についてですが、これは例えば『カスタマーサクセス―サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則(英治出版)』という書籍では、「顧客が自社製品の価値を最大限に引き出せるように手助けする人物」 とされています。「マネージャー」とついていますが、いわゆる「管理職」という意味のものではなく、どちらかというと「カスタマーサクセス担当者」くらいのニュアンスに近いかもしれません。
Autify の CSM もこれに準ずるところが大きく、大きな相違点はないと考えているのですが、「Autify の CSM ならでは」というポイントとしては、以下のような点があるかもしれません。
- まだシリーズA調達(2021年10月実施)を終えたばかり、というフェーズにおいて、既定の CSM の業務領域に囚われることなく、積極的に多くの人と協力しあい、様々な事柄にチャレンジをしていること。
- 技術プロダクトを扱っているということもあり、目の前の事象や問題に対して論理的に考え、冷静に判断をすること。
- 日々の業務を通じて得られる情報すべてを、プロダクトの改善に貢献するためのものとして捉える姿勢を持つこと。
また、上記以外の特筆すべき点があるとすれば「Autify には CRE(Customer Reliability Engineer)がいる」ということです。
それは逆も然りで、「Autify では、CRE と CSM は同じチームに所属している」ということは「Autify で CRE をやる」ことの大きな理由であり、魅力であってほしいと考えています。「CSM は CRE のために」「CRE は CSM のために」、という相互補完的な関係であるべきだと信じているからです。
それでは、Autify の「カスタマーリライアビリティエンジニア(CRE)」とはどのような職種なのでしょうか。
Autify の「カスタマーリライアビリティエンジニア(CRE)」とは?
今現在まさにカスタマーサクセスに取り組んでおられる方は実感としてもある部分ではないかと思うのですが、技術の急速な発展がカスタマーサクセスの進歩を加速させ、カスタマーサクセスをより高度なものとしています。言い換えると、「カスタマーサクセスを下支えしているテクノロジーと同じ速度で、カスタマーサクセスは進化している」とも言えるのではないでしょうか。
つまり、カスタマーサクセスをさらに活用していくことを考えたときに、技術(エンジニアリング)は欠かすことのできないスキルであると言えるだろうし、さらにそれを進化させる(効果をより大きなものにしたり、精度を向上させたり… etc.)ということに対しては、新しい技術やスキルが大きく役立つ可能性も高くなってくる、ということに他なりません。
例えば以下のようなものについては、Autify の CRE に求められる専門性になってくるでしょう。
- CSMのプロアクティブな活動や意思決定を支援することに繋がる技術やスキル。
- カスタマーサクセス施策に対する、日々移り変わる状況や規模への再現性・拡張性(スケーラビリティ)を持たせるために必要となるもの。
- 各顧客がどのような状態にあるか・自社の製品やサービスをどのように利用しているかをデータで把握・追跡・評価するために必要となるもの。
- カスタマーサクセスに関する各種指標の計測、評価、それらの方法に関する技術やスキル。
- 各種カスタマーサクセス活動(ハイタッチ / ロータッチ / テックタッチ)における、伝達手段や協働や管理を助けるための技術やスキル。
- 事業の成長に適応できるようなプロセスやデータの流れを設計するための技術やスキル。
- などなど。
実はこれらについては、以前から CRE 的な動きをしてくれていた(そして今回の職種名の変更で CRE となった)チームメンバーが既に言語化しブログ記事としてくれています(Autifyにおけるカスタマーサクセスツールの導入とデータドリブンな日々の活動が軌道に乗るまでの物語(前編))。
📈 お客様の数とCSチームの成長に応じた「スケーラビリティ」
🔎 観測情報を一箇所に集めた「オブザーバビリティ」
📝 自分たちの行動と、顧客の変化を記録する「トレーサビリティ」
上記の記述は、厳密には「私達がカスタマーサクセスツールに期待すること」に関する表記なのですが、これらの実現とそのために必要な技術スキルがまさに、Autify の目指すカスタマーサクセスを実現するために CRE が発揮していくものと一致している、ということだと考えています。「Customer Reliability(顧客信頼性)」という言葉が「我々がデータなどで捉えられる顧客の姿そのものに対する信頼性」に対しても掛かっているようなイメージです。
ちなみに、今回彼女がCREになるにあたり全社に向けて発表してくれた際の資料には上記のものに加えて「アクセシビリティ」の表記があります。
これもまた、Autify の CRE がどんどんと成長し自らを再定義し続けていることの証左であるように感じており、とても嬉しく、またワクワクしています!
目指すは ”Autify の Customer Reliability Engineering” の確立!
上記のように、「データを(利活用可能な)情報に変え、その情報を行動に変える」ということを、カスタマーサクセスとして実行していく必要があります。その実現に責務を負っているのが CRE というロールであり、そうあってほしい、と考えています。
CRE は CSM の活動の精度や質や効率の向上を支援するためのロールであり、CSM はそれを実現するために顧客に関するインサイトや仮説検証の実行結果などを CRE に提供していく。これが、CSM と CRE は両輪であるゆえん(「CSM は CRE のために」「CRE は CSM のために」!)であり、また、両者は「完全に分類された2つの職種」ではなく、ある程度のレベルで行き来可能な職種同士であってほしい、とも考えています。
この点についても、CREメンバーがとても良い図を作ってくれていたのでそれをここで拝借します。
ところで、「CRE」に似たキーワードとして、「SRE(Site Reliability Engineer / Engineering)」というものがあります。
「SRE」は、それをテーマとした書籍が何冊も刊行されていたりと広く認知されており、考え方としても既に確立されたものとしてあります。
一方で「CRE」は、これを職種として擁立している企業こそ増えてきたものの、まだ「SRE」ほどの域には達していないように思います。より多くのお客様に、より大きな”成功”を届けるためにも、「”Autify の Customer Reliability Engineering” とはどんなものなのか」の確立を目指していきます!
おわりに
今回の決定により、3人いたカスタマーサクセスエンジニアは、2人がカスタマーサクセスマネージャーに、1人がカスタマーリライアビリティエンジニアになりました。
とはいえ現時点ではまだ、良くも悪くも職種名が変わっただけで、チームメンバー間で密に連携しながら業務に当たっています。
ただ、「命名が重要」ということは(特にエンジニアの方であれば!)おわかりの方も多いかと思います。今回刷新された職種として今後活動を進めていき、半年後もしくは1年後に、その後どうなったか?ということについても、何らかの形で発表できたらいいなと考えています。
そして実は私、前職でも「CRE」職の立ち上げに携わっており、前職に続いて今回が二度目です。「CRE立ち上げ請負人(自称)」として、今回の立ち上げも成功裏に成し遂げたいと思います!