Autifyが給与テーブルを全体的に引き上げた理由

Autify, Inc.

2021年10月6日、Autifyは約11億円のシリーズAでの資金調達Autify for Mobileの正式リリースを発表いたしました。 それに伴い、Autifyで働くそれぞれのチームが日頃どのような業務をしており、どのような “Aim High” をしているのかをご紹介する「みんなの”Aim High”」を連載形式でお届けします。 今回は、AutifyがグローバルNo.1という “Aim High”を達成するため、報酬設計を全面的に見直した理由をCOOの清水が解説します。

“Aim High” とは?

わたしたちはコーポレートバリューとして

  • Solve burning needs
  • Aim high, stay grounded
  • Ownership & collaboration

を掲げています。

その中でのキーワードのひとつ、“Aim High”をテーマに今後Autifyがどのような飛躍を目指しているのかをご紹介します。

こんにちは、Autifyの清水です。

弊社はグレードxレベルに応じた報酬レンジによって給与を決定しており、Company deckにて公開もしていますが、今回報酬設計を大幅にアップデートを行いました。

サマリ

  • 給与テーブルの底上げを行い、すべてのグレードで給与額をアップしました。
  • 組織のグローバル化が今後より進むことを見据え、統一の報酬テーブルだけから、まずはジョブタイプ別にテーブルを定義しました。

今日はこの経緯や詳細について書こうと思います。

1年前に給与テーブルは設計していた

給与テーブルは一年前からありました。属人性をなるべく取り除き、より客観的な基準で給与の決定が行われるようにしたかったからです。

給与に関する透明性が低いことが原因で起こる不満や問題は多いです。たとえば判断基準が曖昧で、古株のAさんのほうがBさんより優秀だが、Bさんは前職給与を考慮してAさんより高いらしい、なんて噂を聞いたら組織はギスギスしますよね。でも給与に関して曖昧なまま進めているとよくある話だと思うんです。お金の話は個人と会社の信頼関係もゆらぎやすい話題です。あとからなんとかすればいいとも考えられますが、コンテキストの違いが広がったうえで後から1つに収束させるのは経験上とても大変で、おそらく痛みも伴います。

なのでAutifyでは報酬テーブルだけでなく、評価のプロセスやその方法の妥当性なども納得してもらえるような仕組みを初期からつくりました。ですが課題が1年たたずに多く発生し、今回はそのとき作った給与テーブルの約一年後のアップデートになります。

このままではまずいと思った瞬間

採用面がなにより思うようには進みませんでした。

1つは我々の求めるものが非常に高いこともありました。公用語を英語としており一定の英語力を求めつつ、スキルレベルは十分経験のあるシニアレベル中心、そのうえでカルチャーマッチをすごく大事にしています。Autifyが今後100人、1000人と大きな会社になった時、今入るメンバーがその中核を担うことは間違いありませんので、採用基準は常に妥協せずにとりくんできました。

ただそういった

  • 1.カルチャーフィット前提で
  • 2.グローバルマインドがあり実際に語学にも堪能(もしくは学習意欲が高い)で
  • 3.シニアレベルのスキルを持った経験豊富な方

という三拍子そろった方は当然市場価値も高く、来ていただくには本当に難しい。エンジニア採用で四半期で1人もオファー承諾されないということもありました。

もちろんだからといって要求レベルを落とすことは選びませんでした。採用プロセス改善や新たな媒体・チャネルの開拓、体制補強などと当時に、給与テーブルについての再考も始まりました。

10%強の給与引き上げ

結論として大幅に給与のベースアップを行い、セールス&マーケティング、エンジニアなどプロダクト系に関しては10%以上、その他の職種でも5%以上の報酬引き上げを実施しました。新しいテーブルが以下になります。

各グレードの分布も参考までに公開しましたのでコチラを御覧ください。

たとえば二枚目のSales, Marketing, Engineeringのグループで分布の多いG4:Senior Ⅰというグレードは、

  • Before:¥6,800,000〜¥9,200,000
  • After:¥7,250,000〜¥10,875,000

と今回変更し、上昇幅は+¥450,000〜+¥1,675,000となりました。

中央値も¥8,000,000→¥9,062,500と変化し+¥1,062,500の上昇となりました。

その結果、2021/07/31時点での平均給与も ¥7,748,947(+¥533,810)となりました。

給与テーブル変更の狙いとメリット

一番の狙いはもちろん採用課題の解決です。給与だけが要因ではない前提で、とれる障壁はできるだけ取り除くことにしました。

大きな判断となりましたが、「優秀な人になるべく適正な給与水準を提供できる会社にしていきたい」というは経営陣全員の意思として元々あったので、事業の収益を拡大していくことはもちろんセットの上で、議論自体はスムーズに進みました。

採用にはプラスだったのか?

結果として、変更後の2ヶ月で3名の優秀なエンジニアからオファー承諾を得ることができました。要因は採用チームの様々な努力によるものですが、1人も採用できなかった四半期の次の四半期の数字ですので、プラスに働いたことは間違いないと思います。

苦戦しつづけていたセールスに関しても、1人優秀な方がオファー承諾してくださり採用チームは大盛り上がりでした。

もちろんこの部分は個社ごとの競争環境と方針次第なので、一般化してプラスだったということは言えませんが、我々としては今後も検討しうるポジティブな実績となりました。

既存のメンバーはどうなった?

内部のメンバーも当然新しい基準値にそって自動的に昇給しました。さらに上期の査定自体はそのテーブル変更分を特段加味することなく、査定結果として昇給、昇格となったメンバーはさらに追加で給与アップとなりました。

既存のメンバーの報酬水準を上げられたことは1つメリットというか個人的に嬉しいことでした。Autifyのメンバーはみな英語が求められる、裏を返せば英語でも問題なく仕事ができる人材になっているわけなので、内部メンバーの市場価値も当然上がっていると考えています。ですので既存メンバーの報酬を引き上げることも当然ということで実施しました。

給与テーブル変更のデメリット

デメリットは会社全体で挙げるとすればコストの増加です。今回でいえば全体の給与額にたいして7%ほどのコスト増となりました。

30名の会社でたとえば平均給与を800万とすると、800x30x0.07=1,680万/年のコスト増ということになります。来年社員数が単に倍になっていると仮定すると1,680×2 = 3,360万/年のコストを2022年のPLに追加で乗せた意思決定ということになります。 細かく他のもろもろのコストを考えると更に額は上がりますし、これが毎年現状の従業員数+今後の採用人数にもかかりますのでかなり大きなジャッジであったことは間違いありません。

ですがAutifyとしては必要な投資だと判断しました。

またもう一つ、大変なタスクが給与変更には伴います。変更時の説明責任を果たして全メンバーに納得してもらうことです。 これも実際に変更を試みる人事側の方からすればなかなか大きいタスクだと思います。Autifyでも経営での議論は本当に何度も何度も行いましたし、コンセンサスをとるのは苦労しました。職種やロケーションごとに市場価格にそった給与設計になるということでそこの理解を得るために全社向けのドキュメントや説明機会をしっかり用意する必要もありました。

グローバル組織でより複雑になる人事課題

報酬設計にかんしては一般解がない難しい課題だと思います。それそれのコンテキストの上で個別解を考えないといけません。

今回の「市場価値にどう向き合って給与水準を決めるか」という課題は、我々のケースでは日本の特定の職種だけでの問題ではありません。採用対象が全世界となり、同じ問題がリージョンx職種の数だけ発生していきます。

正直、人事など報酬設計をする側の目線からすると、画一的な報酬設計のほうが楽です。オペレーションも楽になりますし、説明責任も一見果たしやすいでしょう。差をつければ、なぜその差があるかは当然説明責任が発生して、組織が大きくなるほど大変な仕事になります。

ですがやはりAutifyとしては、グローバルな組織でグローバルに事業を進めていくことに揺るぎない意思があるので、早期からグローバル企業になっていくことを見据えた報酬設計を考えていました。まだ第一弾にすぎませんが「ジョブグレード」x「ロケーション」x「ジョブタイプ」での報酬設計を今回から取り入れ、具体的にはセールス&マーケティング、プロダクト、ジェネラルと3つのジョブタイプごとの給与テーブルをつくりました。今後もこれはさらに進化させていきますので決定版でもありません。

今回の給与テーブル変更にも実際にロケーションとジョブタイプが変数として埋め込まれたうえで給与テーブルが計算されています。

「ロケーション」x「ジョブタイプ」を考慮することにした背景となる考えとしては、透明性と妥当性です。特に妥当性でいうと、ロケーションによって物価や生活水準は本当にさまざまなので、「同じ成果を出している人の生活水準が住む場所によって変わる」ということがないようにロケーションファクターをとりいれています。さらに職種による市場価格の差というものが(良い悪いはさておき)存在してしまっているので、そこも変数としてみて、「Autifyでこの職種だけ他の会社にくらべて評価されにくい」ということも起きないようにしたいと考えています。差をつけることは全ての人が簡単に納得できることではないとわかりつつも、Autifyがグローバルな組織を目指すからこそ早めに向き合き合い、多くの人に納得してもらえるようコミュニケーションを続けています。

今後の課題 (助けてください!)

人事・組織面でいえば、今日のお話の報酬設計についてはまだまだ課題も多く、どうやって複雑化していく報酬設計をグローバルでやっていくか、給与だけでなく賞与も事業成長にどう紐付けて決めていくか、などは目下の課題となっています。たとえばセールスであればOTE(on the target-earning)での成果報酬設計は一般的ですしAutifyでも検討段階にあります。

報酬設計だけでなく文化づくり、会社制度の設計もAutifyらしいユニークで前例にとらわれないものをつくっていきたいと考えています。が、どう考えても手が回っておらず進んでないものも正直多いです。

JP以外のメンバーも来年はさらに増えるので、評価以外のバリュー浸透や制度設計などの仕事も基本的に難易度が上がっていきます。ハードル上げてどうするんだという感じなんですが笑、実際にやっていてそう感じています。

今の我々の状況は、アーリー(Series A)フェーズからの組織開発や採用の課題解決を経験したことがある方挑戦したい方にとって、とてもよいタイミングだと思います。僕よりずっと上手にこういった人事課題を解決でき、グローバルに戦える会社を作っていける方は必ずどこかにいるはず…最大限の裁量を渡してAutifyをグローバルで戦う組織にしていってもらいたい。

その他にも絶賛採用強化中となっておりますので、ぜひお気軽にご応募Open officeへのご参加カジュアル面談への応募TwitterDM等よろしくお願い致します。副業も歓迎しております。

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